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世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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セントマーチンズ島~暴風雨の海、人体の神秘の巻

»カテゴリ: バングラデシュ

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ロブスターと97歳の宿主(2004年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 3時間後、暴風雨の島が目前となった。セントマーチンズ島の浜まであと200メートルか。船は錨を下ろした。桟橋には着かない。乗客は軽々と海に飛び込んでいく。飛ぶしかないぞ、悲壮な顔をする和華子に怒鳴った。震える体を起こし、海に落下。他の乗客にバックパックを投げてもらい、遠浅の海を浜まで進む。和華子を拾いに浜と船を往復し、気を静めてから、20キロ近くある荷物を背負う。体は軽く、風は生ぬるく、感覚が遠い。とにかく雨風から、海から、少しでも遠ざかろうと、椰子茂る方に歩き出した。
 そのとき、不思議なことが起きた。半裸の子供の一群に囲まれていた。歓声に包まれていた。足を止めずに、眼鏡を外し、見渡す。パクパク開く子供たちの口と無関係に、歓声がこだまして聞こえる。現実に起きていることなのか。確信が持てない自分がいた。その後はよく覚えていない。宿を見つけ、荷物を下ろして、体を拭き、そのままベッドに倒れこんだ。
 あらためて冷静に思い返してみて、あれは人生で初めて経験する「火事場のバカ力」だったと思う。疲れ、寒さ、荷物の重さが消え失せていた。五感に膜がかかったように、感覚が円やかになった。ただただ一刻も早く抜け出そうと、体が勝手に動いていた。人体の神秘さを感じる。
 ベンガル湾上に浮かぶセントマーチンズ島は、東西1キロ弱、南北はやや長い小島。白浜に囲まれた島の大部分は椰子に覆われている。バングラ最東端の僻地である。電気は通らず、水道もない。今まで割りと不便なところは何か所かあったが、ここは桁違いだ。滞在した6日間に会ったのは、島民以外は、何組かの都会から来た観光客がいるだけだった。
 島の暮らしは面白かった。宿の主人は97歳だという。1955年に教師として派遣されて以来、島に住み着いて半世紀たった。高齢にも関わらず記憶は確かで、島のことはなんでも知っている。「ヒンズー教徒が5世帯いるだけ」だそうで、他はみなイスラム教徒。ふんだんに取れるロブスターやカニは、教義に反するので、食べない。最近まで捨てていたそうである。異教徒にとっては、ロブスターが1匹100円で食べられるのは、天国のようだ。大いに食い、泳ぎ、遊んで、後は本土行きの恐怖の船旅を待つだけである。
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