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世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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バラナシ~不穏な祭の前夜の巻

»カテゴリ: インド

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老婆の死体があった辺り(2004年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 バラナシへ向かう夜行列車。便所の中に男が4人いる。便器にしゃがむ者、洗面台に腰を下ろす者、隅にしゃがむ者、最後の一人は3人の体を支えに宙に浮く。すさまじい混雑ぶりだ。翌々日にヒンズー教の祭を控え、故郷に向かう人たち。ホーリーという祭である。
「なんだって、本気でこれからバラナシへ行くのか。ホーリーまで2日なんだぞ」
 出発間際に会った旅人が呆れる。「ほとんど戦場だぞ」。ホーリーの前後、バラナシは無政府状態に陥ると言う。彼はバラナシでリンチ殺人を目撃し、デリーに逃げてきた。
 列車で乗り合わせた外国人の旅人に聞いてみる。やせ細ったヒッピー風の男がいて、危ないかもしれない、と答える。数年来、一年の半分はバラナシに住んでいるイスラエル人。
「ホーリーはね、なんでも許されるんだよね。一年のうっぷん晴らしに気に入らない奴を殺しちゃう、なんてことも起きる。バラナシの人はね、喧嘩相手に『ホーリーの日に会おう』って言うんだよ、怖いよね」。イドという名前の彼は、詩をそらんじるように静かに話す。「ホーリーはインドの知恵なんだと思うよ。一年に一度、いいことも悪いことも整理しちゃう。ホーリーが終わったら、恨みもいさかいも引きずらない。また日常が戻ってくる・・・」
 翌朝、バラナシに着いた。幅1メートル強の路地が四方に広がる街。バックパックを背負って、迷路をさまよい、覚えきれない道角を曲がったところに、ガンガーが見えた。聖なる河。緩やかに流れる河は空と同じ色だった。陽光に照らされたガンガーは美しい。川岸に宿を取って間もなく、インシックとクックワに再会した。元旦にテヘランで会って以来、方々で何度も時を過ごし、今では長年の付き合いのある旧友のように感じる。
 夕方、彼らに連れられて路地を歩いた。人をかき分けた辻に、老婆の死体があった。白い布にくるまれて路面に横たわっている。家族が無言でたたずみ、傍らに焚き火が燃える。路地を進むにつれ、人通りが増え、大通りに出た。ものすごい人出だ。自転車リクシャがぶつかり合い、露天商が、通行人が、棒を手にした警官が、眉間に縦皺が寄せ、怒鳴り合う。不穏な空気がそこに充満し、日暮れとともに暴発するのを待っている。今までに感じたことのない、場の空気を感じた。それは思い過ごしでは決してなく、確かな感触だった。
 ホーリーは明日である。
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