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世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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テヘラン~異国の正月の巻

»カテゴリ: イラン

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大晦日の晩、テヘランの旅人たちと(2003年)
Photograph by a Masshad Hotel staff


 イラン人は時に信じられないぐらい親切だ。タクシーの運転手に愛想よく、下手なペルシャ語で世間話をしたら、料金を受け取らない。こっちは料金でもめたくなくて、陽気に振舞っているだけなのに、「僕らは友だち、金はいらない」。同じことが1日に2回も起きる。寝台列車では、寝台の上げ下げからベッドメーキングまで、なにもさせてくれない。他の乗客が手分けしてやってくれる。あげくに、到着したテヘラン駅では、通りすがりの青年がまごつく僕らと市バスに同乗。宿探しから料金交渉までやってくれた。チップが欲しいのかと邪推したが、宿が決まったとたん、名前も言わずに立ち去ってしまう。
 実に気持ちがいい出会いが続く。旅人の間でこの国の評判が悪いのが納得できない。
 テヘランで大晦日、元旦を旅人たちと過ごした。アフガニスタンを旅して来た韓国人三人組、日本を出てから1年半になる日本人夫婦と一人旅の大学生、3つのパスポートを持つ香港生まれの男、僕らと同じルートで東へ向かう韓国人カップル。こんな連中と夜な夜な大いに盛り上がった。このメンツと各地で幾度も幾度も鉢合わせることになる。
 何泊かして、タブリースで会った髭の紳士に電話をしてみた。テヘランで建設会社を経営するという彼に、テヘランに来たら必ず連絡するように言われていたのだ。酒を飲ませてくれるのではないか、と期待しているところもあった。
 市北部の彼の邸宅。玄関が開き、出てきたのはヘソ出しタンクトップの美女。髭の紳士の奥さんだった。法律で、女性がスカーフを着用するのが義務になっているこの国には、本来ありえない光景だ。案内された居間には、見事なペルシャ絨毯にあらゆる洋酒がそろった酒棚。正直言って、これほど豪華な部屋は今まで見たことがない。
 スレンダーな奥さんはフィットネスジムに、バレリーナのように可憐な娘は私立学校にそれぞれ通うという。髭の紳士はかなりの金持ちみたいだ。豪華なディナーテーブルで、手作り料理とトルコ・ビールを堪能した。
 帰り道、明日はテヘランを離れ、ゴムという町に向かうことを運転席の紳士に告げる。
「それは奇遇。私も明日、ゴムに出張がありまして。一緒にいかがでしょう」
 迷わず快諾。その時までに、僕は紳士を完全に信頼しきっていたからだ。
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