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世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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ブラティスラヴァ~60ユーロ分の涙の巻

»カテゴリ: スロバキア

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ブラティスラヴァの夕暮れ(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 ドイツから足早に中欧諸国を駆け抜けた。気づけば1週間でチェコ、スロバキア、オーストリア、ハンガリーの首都を泊まり歩いていた。ここはどこだろう。目覚めてから暫く前日の出来事を思い返し、やっと思い出す。窓は水蒸気で曇り、手でぬぐう街はいつも灰色に沈んでいる。10月下旬の中欧はもう冬だ。
 雪が乱れ飛ぶプラハを後に、汽車がスロバキア領に入って間もなくだった。車掌が検札に来た。追加料金が必要だと言う。スロバキアの通貨がないなら両替をしに行こう、と隣の車両の空いていた個室に案内された。
「あなたが支払うべき金額は60ユーロ(約7800円)です」と電卓をはじきながら車掌。あなたの切符はチェコ国鉄区間でのみ有効である、スロバキア国鉄分を支払え、規定の料金だ。距離や支払済みの料金からして、法外な請求としか考えられない。
 押し問答の末、20ユーロを支払えばレシートなしで釈放してやってもいい、と車掌が折れてくる。これは不法なワイロ請求だと踏んで、60ユーロを投げつけ、レシートの裏に車掌の氏名を書き取り、席に戻る。汽車はもう下車駅ブラティスラヴァに到着間際である。
 直ちに駅構内の国鉄本社に向かう。部署から部署へとたらい回された末、英語のできる20代の女性があてがわれた。何回目かの事情説明。声を荒くして返金を要求する。女性はこちらの言い分を聞いては、同僚に通訳する。返金は不可能の一点張りである。
「いいかげんにしろ。あんたの会社は最低だな。泥棒と同じだ。わかってんのか」
 どうにでもなれと捨て台詞を吐くと、女性が初めて自分の意見を話し始めた。
「あなたの国やアメリカならきっと返金すると思う。本当に申し訳ないとは思うけれど、このばかげた国では、どうしても無理なんです」
 栗毛の女性は盛んに自分の国をストゥーピッドと表現しながら、謝った。それを聞いて、立ち去ることにした。照明の乏しい踊り場で別れるとき、彼女はうつむき顔で言った。泣きそうになっていたのかもしれない。
「この国での最初の日が台無しになってしまって、気の毒に思います。無理だとは思うけど、いい旅行ができるといいと願っているわ」
 60ユーロでこんな女性に会えたなら安いものだ。コンコースの扉を肩で押しよけた。
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