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世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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ゲルリッツ~対岸の煤けた町の巻

»カテゴリ: ドイツ

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ゲルリッツから見た対岸(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 ナイセ川は、ドイツらしく整然としたゲルリッツの旧市街の外れにあった。川幅は50メートルもないだろう。対岸に石造りの家々が見える。窓越しに住人の姿が見えるくらい間近にせまる対岸は、ズゴルゼリックというポーランドの町である。第二次大戦後、ドイツは国土の東部を失い、オーデル川とナイセ川が新たな東部国境になった。ナイセ川に面する国境町ゲルリッツは、人口6万、ドイツ南東端に位置する。
 旧市街から数百メートル離れたところに国境橋があった。歩行者用入口から橋に近づくと、粗末なコンテナ小屋があって、ここでドイツ出国となる。真横のコンテナにはポーランドの係員がいて、「コニチワ」とひょうきんに声をかけてきた。僕らはパスポートを見せ、スタンプを押してもらうが、他の徒歩越境者は身分証明書のようなカードを見せるだけだ。緊張感のかけらもない国境風景。半年後にせまったポーランドのEU加盟後は、国境自体が消滅する予定である。
 夕暮れがすぎた時間帯、対岸のズゴルゼリックは暗闇の町だった。人気のないゲルリッツとは対照的に、若者が連れ立って、舗装の悪い坂道を行き来する。炭の臭いにも似た、煤けた臭いがする。石炭で暖房をまかなっているのかもしれない。ゲルリッツと建物の造りはさほど変わらない。にもかかわらず、別世界に来た気分になる。
 バー・カリフォルニアと看板があって、恐る恐る地階のドアを開いた。バーカウンターには客はいなくて、テーブル席はあらかた埋まっている。案外まともなレストランみたいだ。渡されたメニューは、ドイツ語とポーランド語。さっぱり分からないので、適当に指差して注文したら、ラザニアのような料理が出てきた。味は悪くないが、どこがカリフォルニアなのだろう。
 帰りに雑貨屋でミネラルウォーター、インスタントスープと煙草を買う。対岸ドイツの4分の1以下である。ゲルリッツに商店があまり見当たらないのも無理はない。こんなに物価に差があっては、勝負にならないに違いない。
 また国境橋を渡り、楓の落ち葉が舞う、静まり返った町を歩いて20分、宿に戻り、ポーランド煙草に火をつけた。
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