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カテゴリ: ドイツ
韓国人の落書き(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki いまベルリンには壁はほとんど残っていない。わずかに都心の旧ナチス党本部前、住宅地のごく普通の街路片側に壁が築かれたベルナウアー通りともう一ヶ所、シュプリー川に面した壁ぐらいだ。いまこの壁は、一種の屋外美術館になっている。壁に描かれたスプレー画が2キロにわたり続いている。平和を象徴する鳩、東ドイツから逃走する兵士、抽象画が脈絡なく続く。
管理人もいない屋外展示とあって、スプレー画の上には油性ペンの落書きが目立つ。ふとハングルの落書きが多いことに気づいた。韓国人観光客はマナーが悪いな、と思いつつ進むと、ハングルの数行の中に「One Korea」の英文字が目についた。そうか、韓国も分断国家か。韓国人にとっては、この屋外美術館は単なる名所見物とは違うのだとやっと気づいた。ここで改めて自国の状況を振り返り、統一を訴えたくなるのだろう。
そのまま進むと、今度は中国語の落書きが目立つ一角があった。中国人らしい達筆は、どれも「統一」とあった。彼らからすると、台湾の現状は祖国分断になるわけで、なるほどそれで統一祈願なのか。なんとなくピンと来ないが、中国人から見れば、そうなるのか。
長居したベルリンを後にして、旧東ドイツ南部の主要都市ドレスデンへ南下。ユースホステルのドミトリーに泊まる。暖房が効いた5人部屋でドイツ南西部のシュツッガルトから来たドイツ人と同室になった。ドレスデンに来たのは初めてだという彼らは、「税金の使われ方を調査にしに来た」とにやけた顔で言う。もちろん税務署員ではなくて、旧東ドイツ再建のために、多額の税金が投じられたことの皮肉らしい。
「それで、君らの税金は有効活用されていると言えそうかい」
「いや、もっと増税しないとヤバいね。この街の道はガタガタだからね」
二人組の片方は、ハノーバーで育った少年時代、旧東ドイツから女の子が転校してきたのを覚えていた。
「パン屋で売っているパンの種類が多いと驚いていたよ。
彼らの口ぶりにどこか棘を感じて、北朝鮮から亡命してきた少女は、ソウルの街で真っ先に何を買うのかとふと夢想した。
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