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世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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フェズ~国境を越えることを夢見る人たちの巻

»カテゴリ: モロッコ

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フェズのメディナにて(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 モロッコで出会った人々は、外国人の友だちの話をしたがる。「日本にガールフレンドがいる。兵庫県××郡××村、知ってるかい」といった話を何回聞いただろうか。モロッコに絶望した、豊かな国に行って成功したい、そんな夢を幾度も聞かせられた。
 和華子が病床に伏せていたある日、様子を見に部屋にやってきたシーモも国境を越えることを夢見る青年だった。ボクサーのように引き締まった浅黒い青年。どんなに優秀でもワイロを払う金がなければ、警官にもなれないと流暢な英語で嘆く。セウタ国境の柵を泥水まみれで乗り越えた男を思い出した。彼もいつかあの柵をよじ登るのだろうか。
「そんなことをしたら、スペイン兵に撃たれるよ。僕は死にたくない。ちゃんと飛行機に乗って行く。そのためにヨーロッパ人と結婚をして、いつか必ずヨーロッパに行くよ」
 宿から表通りに出るたびに、麻薬いらないか、と声をかける29歳のアブドゥルという男がいた。ビールを飲みに行く僕に、一緒に行きたいと言う。誰かと飲みたくなって、一緒に酒場に入った。おおっぴらに酒を飲めないこの街では、酒場は薄暗く、女はいない。
「最初の2回はスペインに行ったわけ。すぐ捕まって、強制送還。3回目はイタリアに行った。イタリアはよかったよ。捕まらないし、稼げたし。フェラーリに乗ってたんだぜ」
 ビールを追加して、彼のイタリアでの仕事を聞いた。
「ドラッグを売ってた。文字書けないし、パスポートないし。他に仕事はないんだよ。最後はパクられて、ムショに6年。料理当番やってたから、スパゲッティ作らせたらイタリア人もびっくりのうまさだよ」
 近々、スペイン国境をよじ登って、ドイツへ行くつもりだ、もうドラッグは売らない、動物園で働きたい、と言う彼は自信なさそうな顔だった。
 そんなことをしていたら、いつか死ぬぞ。酒が回ってきて、説教口調になった。料理人になれよ、ちゃんとビザを取って行けよ、いつかベルリンでモロッコ料理屋でも開けよ。なんの根拠もない無責任なアドバイスだとは分かりつつ、偉そうに口にした。
 アブドゥルは意外にも、そうか、料理人か、とうなずき、「10年後、必ずベルリンに来いよ。タダ飯食わせてやるよ」と言った。その晩以降、表通りで彼を見かけなくなった。
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