Tanimichi World Blog

世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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香港~冷えたビールには熱したグラスの巻

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ビクトリア港の夜景(2004年)
Photograph by Kenta Tanimichi


 香港に着いた翌日、ピーターに誘われて、彼の友だちと食事に行った。地下鉄の駅からそのままエスカレーターを上り、ガラス張りのショップが並ぶビルにあるレストランに入った。魚やエビが泳ぐ水槽がいくつもある大型店。円卓に通されて、紺のブレザーを着たウェイターがマスクをしているのに気づいた。他の従業員もことごとくマスクをしている。マスクだけではない。冷えたビールが台無しになるぐらい、グラスが熱されていた。
「SARSの影響なのだろうけどね」ピーターの友人が訝しがる僕らに説明してくれた。「この店はやりすぎだと思うけど、香港人は衛生に敏感だから」
 中国から来ると、香港の清潔さは見事だ。テレビは、水たまりをつくらないよう頻繁に政府広報コマーシャルを流す。デング熱を防止する目的だという。デング熱は蚊が媒介する熱病。マラリアと異なり、予防薬はない。蚊の発生を食い止めるのが、防止最善策なのだという。蚊は水に繁殖するから、水たまりをつくるな、となる。確かに香港の街をサンダルで歩き回っても、足が汚れない。歩道は段差なく敷かれ、水たまりがないのだ。
 1年近く途上国と言われる地域で過ごしてから、マカオ、そして香港に来て、戸惑うことが多い。道を渡ろうとすると、車がちゃんと止まる。トイレの紙を便器に捨てていい。街にあふれる標識の指示通りに進むと本当に目的地に着く。これが文明なんだなと思った。立派な地下鉄はイランにもあるし、ブロードバンドはベトナム全土に普及している。パキスタンにだって高速道路もマクドナルドもある。しかし、安全思想、衛生観念、公共秩序といったような、人々の考え方は、建設工事をすれば完了というわけにはいかない。
 文明。中国を旅していると、バスターミナルのような思いがけないところで、この文字に出会う。「講究社会公徳、建設文明城市」などとスローガンが大書きされている。もちろん誰も気にしない。走る車から空き缶を投げるし、ところかまわず痰を吐く。僕も特に気に止めなくなった。香港に来てみて、文明のありがたみに戸惑い、感心する自分がいた。
 ただ、文明のある土地の旅は、安心で楽だが、面白くはない。なにもかもが予定通りに進み、人に道を聞く必要さえない。旅人を見かけても話しかけるきっかけもなく、味気なく夜が過ぎる。ああ、懐かしい、先進国的退屈。
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