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世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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シエムリエプ~遺跡で町で虐殺の本の巻

»カテゴリ: カンボジア

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アンコール遺跡群で(2004年)
Photograph by Wakako Takatsuki

 カンボジアには3種類の通貨が流通している。法定通貨のリエル、米ドル、タイバーツだ。釣銭はリエルが多い。1ドル=約40バーツ=約4000リエル。慣れるまで頭がこんがらがる。物価は安い。シエムリアプの宿代は3ドル、タバコは1箱500リエルだから15円しないぐらいか。
 ただ、アンコールワットの入場料は別である。1日券が20ドル。恐ろしく高額に感じる。ちょうど旅に出て1年経ち、物価感覚が日本離れしてきた。日本円に換算すると、10円、20円のことで、値引き交渉したり、別の店に行ったりしている。
 朝5時、日の出のアンコールワットを見た。薄暗いなか、石造りの参道を進み、寺院を見わたす草地で日の出を待った。ちらほらと観光客が現れた。遠くでかすかに読経が聞こえる。草地の外れの林に橙色の袈裟が見えた。群青色の空に光が入ってきた。フラッシュが光り、英語やフランス語の会話が聞こえた。僧侶はいつの間にかいなくなっていた。
 わずか10年ほど前まで、アンコールワットを取り巻く遺跡群には、多くの地雷が埋設され、ときおり銃声が聞こえたという。遺跡によっては、武装兵士を雇って見に行くのがふつうだったらしい。この国は、ベトナムの戦乱が終わってからも、さらに20年間にわたり政変、内戦、大量虐殺が続いてきた。
 いまアンコールの遺跡群を見て回ると、物売りに取り囲まれる。小学生以下の子どもが多い。英語を自在に操る子もいて、売り口上もなかなかのものである。
「マダガスカルの首都知ってる? 教えてあげたら、お母さんが作った笛を買って下さい」
 1ドル、2ドルの買い物だから、必要なくても買ってしまう観光客も多いに違いない。和華子はFirst They Killed My Father(邦題『最初に父が殺された』)という題名の本を4ドルで買った。ポルポト政権時代の虐殺を描いたノンフィクション。カンボジアについて書かれた本はどこでも格安で買えるが、すべて海賊本である。
 遺跡を見物した後、すぐに首都プノンペンに向かってもよかったが、のんびりすることにした。ポルポト時代について書かれた本を読んで、予備知識を頭に入れたい。プノンペンには、カンボジア虐殺の博物館などがある。もう少し知っておきたいと思った。

* ルオン・ウン『最初に父が殺された―飢餓と虐殺の恐怖を越えて』(和訳、Amazon.co.jp)
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