Tanimichi World Blog

世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

スポンサーサイト

»カテゴリ: スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

テヘラン~人の「善悪」を思うの巻

»カテゴリ: イラン

20050104235232.jpg

魚市場で(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 テヘランを発つ日は大雪になった。髭の紳士は夕方5時頃に迎えに来るとのこと。宿で時間を潰していると、夫婦で1年半も旅をしているエリさんがやって来て、神妙な顔をして言う。金持ちの***氏のことだけど、本当に大丈夫かな。止めたほうがいいんじゃない。
 紳士の車で移動をするのは危ないと言う。なんでも、この宿に泊まっている大学生のタシタ君が、パキスタンで意気投合した金持ちと移動中に、殴打され、金品を奪われたというのだ。話が似すぎているのよね、余計な心配かもしれないけど、とエリさんは繰り返す。
 そんなことを言われても、約束してしまったし、特に怪しげな人とも思えない。家にも行ったし、家族にも会った。
「タシタ君も同じだったって。金持ちだし、家も見たし、家族も会ったし、これは大丈夫って。でも、やられてるし。夜に車で移動するのは危険だと思うけどな。なんで朝出発しないの。暴漢に車を襲わせて、***氏も被害者になるように仕向けることだってできる。とにかく、相手がプロならなんでもできるのよ」
 僕はエリさんの顔をまじまじと見てしまった。この人は、どんな辛い旅をして来たんだ、どんな人と会ってきたんだ。彼女が口にすることは、茶髪で割とあどけない顔とあまりに不釣合いだった。それでいて、全てを見抜いているようでもあった。彼女の言う通りかもしれない。親切な目にあったり、紳士の裕福さを見せられて、惑わされたのかもしれない。
「とりあえず今日は雪だから取り止めて、明日バスで行くって返事したら。それでも、***氏が、明日一緒に行こうとか言ってきたら、これは本当にヤバいわよ」
 その通りに紳士に電話で告げると、彼はエリさんが予想した通りのことを言った。明日にしましょう、と。
 結局、僕らは紳士とゴムに行かなかった。彼が善人なのか悪人なのかは分からずしまいだ。エリさんとの会話がなかったら、分かっていたはずだが、僕らはエリさんの言い分を選んだ。
 考えてみれば、僕は長らく人の善悪なんか判断しない生活を送ってきたんだなあ、と思った。

* エリさんのホームページ「タビフーフ」
スポンサーサイト

テヘラン~異国の正月の巻

»カテゴリ: イラン

20050104235228.jpg

大晦日の晩、テヘランの旅人たちと(2003年)
Photograph by a Masshad Hotel staff


 イラン人は時に信じられないぐらい親切だ。タクシーの運転手に愛想よく、下手なペルシャ語で世間話をしたら、料金を受け取らない。こっちは料金でもめたくなくて、陽気に振舞っているだけなのに、「僕らは友だち、金はいらない」。同じことが1日に2回も起きる。寝台列車では、寝台の上げ下げからベッドメーキングまで、なにもさせてくれない。他の乗客が手分けしてやってくれる。あげくに、到着したテヘラン駅では、通りすがりの青年がまごつく僕らと市バスに同乗。宿探しから料金交渉までやってくれた。チップが欲しいのかと邪推したが、宿が決まったとたん、名前も言わずに立ち去ってしまう。
 実に気持ちがいい出会いが続く。旅人の間でこの国の評判が悪いのが納得できない。
 テヘランで大晦日、元旦を旅人たちと過ごした。アフガニスタンを旅して来た韓国人三人組、日本を出てから1年半になる日本人夫婦と一人旅の大学生、3つのパスポートを持つ香港生まれの男、僕らと同じルートで東へ向かう韓国人カップル。こんな連中と夜な夜な大いに盛り上がった。このメンツと各地で幾度も幾度も鉢合わせることになる。
 何泊かして、タブリースで会った髭の紳士に電話をしてみた。テヘランで建設会社を経営するという彼に、テヘランに来たら必ず連絡するように言われていたのだ。酒を飲ませてくれるのではないか、と期待しているところもあった。
 市北部の彼の邸宅。玄関が開き、出てきたのはヘソ出しタンクトップの美女。髭の紳士の奥さんだった。法律で、女性がスカーフを着用するのが義務になっているこの国には、本来ありえない光景だ。案内された居間には、見事なペルシャ絨毯にあらゆる洋酒がそろった酒棚。正直言って、これほど豪華な部屋は今まで見たことがない。
 スレンダーな奥さんはフィットネスジムに、バレリーナのように可憐な娘は私立学校にそれぞれ通うという。髭の紳士はかなりの金持ちみたいだ。豪華なディナーテーブルで、手作り料理とトルコ・ビールを堪能した。
 帰り道、明日はテヘランを離れ、ゴムという町に向かうことを運転席の紳士に告げる。
「それは奇遇。私も明日、ゴムに出張がありまして。一緒にいかがでしょう」
 迷わず快諾。その時までに、僕は紳士を完全に信頼しきっていたからだ。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。