Tanimichi World Blog

世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

スポンサーサイト

»カテゴリ: スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

サボティサ~CNNの向こう側の巻

»カテゴリ: セルビア・モンテネグロ

20050104215749.jpg

紅葉の町サボティサ(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 ハンガリーの平野を南に進んだ大学町セゲットの郊外でバスは国境を越えた。

НОРГОШ
ул 02XI03
202

 入国スタンプにキリル文字が残った。НОРГОШは国境地点の名称だろう。となると、улが国名の略称なのか。ガイドブックによるとこの国はユーゴスラビア。ただ、近々セルビア・モンテネグロに改名される予定だともある。改名された前なのか後なのか、わからないまま入国することになった。
 小一時間走って雨降るサボティサに到着。バスターミナルそばの国営ホテルに部屋を確保して、町に出た。楓の落葉が広場を彩る落ち着いた風情である。楽団が演奏する店で飯をくう。コーヒーを飲み干すと底にカスが残った。トルコ式コーヒーだ。流れる音楽もどことなく中東風。少しずつトルコに近づいている。
 観光案内所で上品な英語を話す中年女性が地図をくれた。国名の件を尋ねると、「しばらく前に」改名済だとのこと。日曜日なのに営業しているのは助かると言ったら、やっと最近観光客が戻ってきたので、市もがんばっているという話だった。なにしろこの国、つい最近まで血なまぐさい内戦を繰り返し、民族間虐殺などで悪名高いのだ。
「ちょうどお産を控えていたときに、内戦が始まってねえ。主人は職を失うし、町中に戦車は走るし、どうしようかって思ったわよ。それでモスクワへ行ったの。そこで仕事をみつけて。ようやく国が落ち着いたと思って、帰ってきたら、今度はアメリカが攻撃してきたでしょう」
 わずか4年前に米軍機による空襲があったという。
「飛行機も来たし、トマホークもピユーって音をたててね。電気も水も止まるし、怖かったわよ。病院にも命中したんだから」
 淡々と話す彼女にあっけにとられていると、「そんなに驚くことでもないでしょう」と彼女にたしなめられた。「CNNの画面の向こう側にも人が住んでいるのよ」
スポンサーサイト

ブラティスラヴァ~60ユーロ分の涙の巻

»カテゴリ: スロバキア

20050104215737.jpg

ブラティスラヴァの夕暮れ(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 ドイツから足早に中欧諸国を駆け抜けた。気づけば1週間でチェコ、スロバキア、オーストリア、ハンガリーの首都を泊まり歩いていた。ここはどこだろう。目覚めてから暫く前日の出来事を思い返し、やっと思い出す。窓は水蒸気で曇り、手でぬぐう街はいつも灰色に沈んでいる。10月下旬の中欧はもう冬だ。
 雪が乱れ飛ぶプラハを後に、汽車がスロバキア領に入って間もなくだった。車掌が検札に来た。追加料金が必要だと言う。スロバキアの通貨がないなら両替をしに行こう、と隣の車両の空いていた個室に案内された。
「あなたが支払うべき金額は60ユーロ(約7800円)です」と電卓をはじきながら車掌。あなたの切符はチェコ国鉄区間でのみ有効である、スロバキア国鉄分を支払え、規定の料金だ。距離や支払済みの料金からして、法外な請求としか考えられない。
 押し問答の末、20ユーロを支払えばレシートなしで釈放してやってもいい、と車掌が折れてくる。これは不法なワイロ請求だと踏んで、60ユーロを投げつけ、レシートの裏に車掌の氏名を書き取り、席に戻る。汽車はもう下車駅ブラティスラヴァに到着間際である。
 直ちに駅構内の国鉄本社に向かう。部署から部署へとたらい回された末、英語のできる20代の女性があてがわれた。何回目かの事情説明。声を荒くして返金を要求する。女性はこちらの言い分を聞いては、同僚に通訳する。返金は不可能の一点張りである。
「いいかげんにしろ。あんたの会社は最低だな。泥棒と同じだ。わかってんのか」
 どうにでもなれと捨て台詞を吐くと、女性が初めて自分の意見を話し始めた。
「あなたの国やアメリカならきっと返金すると思う。本当に申し訳ないとは思うけれど、このばかげた国では、どうしても無理なんです」
 栗毛の女性は盛んに自分の国をストゥーピッドと表現しながら、謝った。それを聞いて、立ち去ることにした。照明の乏しい踊り場で別れるとき、彼女はうつむき顔で言った。泣きそうになっていたのかもしれない。
「この国での最初の日が台無しになってしまって、気の毒に思います。無理だとは思うけど、いい旅行ができるといいと願っているわ」
 60ユーロでこんな女性に会えたなら安いものだ。コンコースの扉を肩で押しよけた。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。