Tanimichi World Blog

世界32か国、16か月の旅。

ユーラシア横断陸路の旅 まえがき

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ポルトガル

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PORTUGAL, Jul 2003
* Lisboa#
* Faro
* Tavira
* Vila Real do Santo António (1)
* Vila Real do Santo António (2)
# 写真撮影地。Photograph by Wakako Takatsuki

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Map courtesy of the U.S. Central Intelligence Agency.

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ヴィラレアル~マグロ干し肉と緑ワインの巻

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勧められたワインを調子よく飲む筆者(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 国境の町ヴィラレアルでポルトガル最後の夕食を済ませ、店を後にしようとしたとき、出口に近いテーブルの男たちが食べているものが目についた。鰹節に似た、タバコカートン大の褐色の塊をナイフで薄く削いでいる。男たちのテーブルの横に立って、物欲しげに見ながら、「これは何だ」と声をかけてみる。酔いも回って威勢のいい男が「マグロ、マグロ、食え、食え」と一枚分けてくれた。マグロの干し肉らしい。荒く削った鰹節のような味で、日本にあってもおかしくないように思えた。
「これはうまい」と調子よく返事をして、テーブルに載っていた他の珍味を指差して、「これは何だ」とやると、「食え、食え」となって、「これはうまい」と僕が叫ぶ。そのうち、隣のテーブルの髭の紳士から声がかかって、「坊主、飲め、飲め」とワインを勧められた。ヴィーニョ・ヴェルデというわずかに緑がかった色をしたスパークリングワイン。辛口が珍味に合う。これも「うまい、うまい」とやっていると、髭の紳士がやけに喜んで、どんどん酒を注いでくれる。
 マドリッドから奥さんとバカンスに来たスペイン人だった。ゆったりした感じに聞こえるポルトガル語と違って、髭の紳士と奥さんのスペイン語は、やけに早口に聞こえる。
「どこから来た? ああ、ハポンか。ハポンにはイントルネットあるか? 私の名前、ホセ、彼女はマリア、息子はマリオ。結婚しているか? スペインには行かないのか?」と畳み掛けるように聞いてくる。僕らがポルトガルに宿を取って、スペインで食事や買い物をしたように、ホセとマリアはスペイン側の町アヤモンテに泊まっていて、ポルトガルに夕食を食べに来たのだという。僕らが往復した航路の上流には、両国を結ぶ道路橋がかかっていて、車があれば10分で渡れる。
 明日、セビーリャに行くと答えると、ホセは眉間に皺をよせて、僕にもわかるスペイン語で言った――「セビーリャ、カロール。ムーチョカロール」
 セビーリャは暑い、ものすごく暑い。37度から40度になる。スペインで一番暑い。とにかく暑いところだ。まあ、楽しんでおいで。
 川風が心地よいヴィラレアルでそう言われても、どうもピンと来なかった。

ヴィラレアル~タオルとナイフの巻

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タオル商が目立つヴィラレアル(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 ファーロ、タヴィーラとポルトガル南海岸を東に進む。その先にあるのはスペイン。ポルトガル側の国境の町・ヴィラレアルデサントアントニオに向かった。
 タヴィーラからのバスは、国境の大河に面した船着場で終点になった。川沿いの道を歩いて、適当なところで曲がると、商店やレストランが連なった賑やかな町に出た。思ったよりも人通りが多い。宿もないような寂しい町なら、スペイン側に渡ってしまおうかと思っていたが、ここなら心配なさそうだ。
 商店街の外れに安宿を見つける。英語がまったく通じない老婆に一番安い部屋を頼むと、2段ベッドの窮屈な部屋に案内された。男女二人旅で2段ベッドもないかとも思ったが、安いし、風通しがいいので、ここに決める。しゃがれた声で険しい表情の老婆は、僕が宿帳に記帳し終わると、初めて英語を口にした――マネー。26ユーロを前払いする。途端に笑顔になったので、ほっとした。旅に出てから、言葉が不自由な分だけ、人の表情や仕草が気になるようになった。
 国境の商店街は、タオル、シャツなどの衣類を売る店が多い。船着場で会ったスペイン側の住民によると、ポルトガルは衣類が「ヨーロッパ一安い」という。衣類以外には、ナイフを売る店が多い。これもスペインよりも安いのだろう。
 スペインに渡る船は安い。片道1・05ユーロだからタバコの半箱程度。30分おきに船が出る。切符を買って、川べりまで歩き、船を待つ。出国審査場とか免税店どころか、建物すらなく、ただの川べり。
 川上から下ってくる船を眺めていると、浅黒い肌の女の子にスペイン語で話しかけられた。時刻を聞かれているらしい。腕時計を見せると、「ポルトガル? スペイン?」。両国の間に時差があることに気づいた。スペインは1時間進んでいる。
 スペイン語の女の子は英語がまったくできない。僕の彼女が怪しげなスペイン語で話を聞くと、南米エクアドルからスペインに出稼ぎにきている二十歳だとわかった。盛んにスペイン側の町アヤモンテは暑いという。船で10分しか離れていない対岸の気温が大きく違うとも思えないが、彼女が巻き舌で「カロール」(暑い)と発音するのが耳に残った。

ファーロ~つき出しの生ハムの巻

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ファーロの街角(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 リスボンは気温25度前後と快適で、食も口に合い、歩き回っても飽きがこない。それに零時を回っても、人通りがあるし、地下鉄やバスでも身に危険を感じることがなかった。
 何日か過ごし、この街で、「どこから来たのか」と問われていないことに気づいた。旅をしていると、出会う人に必ずといっていいほど聞かれる質問がここではない。店員と事務的な会話以上の話になっても、「あなたは何人なのか」と聞かれることがないまま終わる。無粋だと思うのか、よそ者に関心がないのか。
 外国人に声をかけずにはいられない街にいると、鬱陶しく感じるのに、相手にされていないようなのももの足りない。わがままな旅人の心情なのだが。
 リスボンに6泊して、ポルトガル南部の町、ファーロに向かう。船と列車を乗り継いで5時間の道のりだ。
 安宿をとって、町に出る。ここは生ぬるい風が時おり吹きぬけ、陽射しが強い。停泊するヨットを右にして、海沿いの散歩道を進むと、頭上に着陸態勢をとったジェット機が横切っていく。アフリカを対岸に望むこの地はヨーロッパ有数のリゾート地帯だという。
 夜、伊勢海老や蟹を店頭に並べた店を見つけた。貼り出されたメニューは割りと安い。ひょうきんな表情の女の店員にうながされて店に入る。料理は期待以上で、なかでも、つき出しの生ハムが実にうまい。ところが、勘定を払う段になり、伝票を見ると、メインの料理よりも高い項目がある。生ハムだという。食ってしまったのだからしかたがないが、陽気な店主をにらみつけてやったら、釣銭とともに頼んでいない酒とつまみを運んできた。
「もちろんタダです。飲んで、飲んで。そうだ、写真を撮ってあげましょうか」
 やけに狼狽するのがおかしくて、カメラを手渡した。

リスボン~エスプレッソにコロッケの巻

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リスボンのパシュテラリア(2003年)
Photograph by Wakako Takatsuki


 行き先も期限も決めない旅をするのが夢だった。ポルトガル行きの切符を取ったものの、下調べをする間もなく、あわただしい毎日が過ぎた。仕事を片付けたり、税金を完済したり、パソコンを買ったり、送別会を開いてもらったりしているうちに、出発日が来た。この旅は、つき合って3年になる彼女とふたり旅だ。
 初めて来たリスボンは坂の街だった。市街の左右に迫る丘に向けて、無数の坂道が延びていく。石畳の坂を上がると、寺院や城砦があって、その向こうにも坂と街が広がっている。道は狭くて、ぐねぐね入り組んでいている。
 かなりの距離を歩いたつもりが、後で地図を確認するとほんの2、3キロに過ぎなかったりする。石畳の道は凹凸があって、山歩きのように疲れることに気づいたころには、足の指に水ぶくれができ、両腕や顔が赤く妬けていた。
 リスボンの街には、そこいら中にパシュテラリラという軽食堂がある。僕らは歩き疲れては、パシュテラリアに入るようになっていた。
 どこのパシュテラリアも、カウンターがガラスの陳列棚になっていて、惣菜や菓子パンが並べてある。円筒型のコロッケのようなものを指差して、食べてみると、魚の味がするコロッケそのもの。名前を聞いてみると、「クロケット」。別に日本古来の食べ物ではないから、驚くべきことではないのだけど。春巻きもあれば、インドのサモサもある。どれも一口大の大きさで、安くて、うまい。惣菜ふたつにエスプレッソを飲んで200円台で済む。
 ポルトガルに来て1週間。気づけば、一日もかかさず、パシュテラリアで朝食を取っている。コロッケや春巻きを片手にエスプレッソを飲むのは、考えれば奇妙な習慣だ。
 朝のパシュテラリアは忙しい。新宿駅のプラットホームのキオスクのように、客が入れ替わり立ち寄っては、口々に注文を出す。手際よく裁いていかないと、たちまち滞ってしまう。煙草に火をつける客があれば、すかさず灰皿を持ってよこし、持ち帰り用を頼む客には、包装をしてやり、実にてきぱきとよく動く。それでいて、血走った表情でもなく、淡々とこなしている。
 この街の人々は、賑やかでもないけれど、不親切でもなくて、優雅に手際がよい。
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